アメリカのアイオワ州で育った私が、まさかここ日本のさらに大阪で、妻と二人の子ども共に暮らすことを想像したことはありませんでしたが、紆余曲折を得て私はここにいます。一般的な起業者としてだけでなく、日本への移住者として、様々なハンデを負いつつも、ここ日本でビジネス関係のパートナーを探すなかで私は多くのことを学びました。
往々にして、アジア諸国だけでなく海外を旅行する上での常識としては、宗教や文化などの基本的な理解、訪問する場所、食べる場所など、おおまかな情報だけを頭に入れておくだけで十分です。最近私は、自分が住んでいる場所を観光客として訪問してみたい!と思う時があります。しかし、もしあなたが展示会・見本市のショーやイベントの業界で働いているのであれば、各国によって異なるビジネスの特徴について熟知していなければなりません。日本は中国とは完璧に異なります。京都と上海は全くもって違うビジネス文化体系をもっています。
ここで私は海外で開催される国際的な展示会・見本市へのブース出展及びプログラムにおいて適切なパートナーを探す際に、最も重要なポイントをご紹介したいと思います。
1:まずは情報の収集として、国際的な展示会・見本市関連の出版社と協会の存在です。展示会・見本市関連の情報誌、エキシビターマガジンのような出版物や、EPDAやIFESなどのような、国際的かつ海外の展示会関連の協会を通して、少し海外の展示会のトレンドなどを研究してみてください。和文での情報誌ではないので、少し情報収集に苦労されるかもしれませんが、このようなリソースは国によって貿易展、展示会がどのように異なるか、といった疑問に素早く答えてくれます。
2:海外展示会出展における協力パートナー企業、現地企業についても知っておくべきです。海外でのビジネス経験があるからと言って、彼らを知った気でいてはいけません。(本当に何が起きるのか分からないものですので)なんでも展示会の運営事務局や、ブース出展パートナー企業に疑問をもったことを質問しましょう。
パートナーとなる企業の前提としては、必ず貴社の業界における専門知識及び経験をもっている、と踏んでからパートナーの提携をすると思います。貴社の業界だけでなく健康ビジネス、テクノロジーやビデオゲーム業界など、あらゆる業種・業界に関連する展示会ビジネスついて知っておくことは非常に重要ですし、また出展先の国によっても異なるブース制作規制についてももちろん知っていなければ、パートナーとして成立しません。さらに国際的に名の知られた展示会・見本市は、開催地・開催国及びそのスケジュールを含め、一定の開催サイクルがあります。
展示会出展におけるパートナー企業に対しては、展示会開催期間中の写真及びパートナー会社が取り組んできたことの結果なども聞く必要があります。特定の国の出展において何がスムーズに進行し、何がうまくできなかったか、何が最も難しく、ハードルが高いポイントだったことなど、出展パートナー探しにおいて必須質問項目です。
3:現地の施工に関わる労働人員の文化について知っておくことも必要です。労働・勤務状況や文化は国によって異なります。労働組合があるところもあれば、ビジネスにおいてアマチュアからプロレベルまでの、クラスがあるところもあります。労働時間が定まっている場合、制作が途中でも帰ってしまう場合もあれば、終わるまで作業をし続ける場合もあります。パートナーとなる企業は、展示会が出展される国の労働・勤務状況において熟知しておかなければなりません。
4:各国現地でのブース制作におけるルール、税金及び固有の費用についても頭に入れておきましょう。アメリカでは世界中より評判の悪い「ドレージ」という搬入における横持ち料が定着しています。作業保証、技術サポート、撤去・処分・リサイクル費用についての知識もどうでしょうか?私は、お客様が驚かれないよう、アジア各国の独自のルールや、国によって異なるその費用について覚えました。各国の展示会のマニュアルを慎重に、じっくり読みましょう。もしマニュアルに入っていない内容であれば、運営事務局やパートナー企業に聞きましょう。掃除サービスはないか。バッジスキャナーはないかなどを調べるように依頼しましょう。
5:好まれるデザインとブースに使われる材料も、国によって違います。北米のデザイナーや、ヨーロッパからのデザインだからといって、必ずアジア諸国で同じように使えるわけではありません。沢山の国々ではブースにおいて、「展示会終了後「ビルド・アンド・バーン」といった、日本語でいえば、「作って燃やす」といった方法を採用しています。大陸を超えて船便で出展物を輸送される出展企業様にはおかしい話に聞こえるかも知れません。また、開催現地国の規制もあります。日本では地震に関する規制と保険が義務付けられ、天井からつるすことは禁止される一方、インフレータブルの使用は認められるのが一般的です。ヨーロッパの多くの国々では展示会の施工時に床上げをしますが、日本では使用が少なく、中国及びその他の国々でよく使われます。日本と韓国では化粧板より表具仕上げが好まれます。私たちは、施工時に使われるサンプルの見本をお客様によくお見せします。ロールペイント、表具、化粧板、またカーペットなどは北米地域の展示会で頻繁に使われるものとは、完全に異なるかも知れません(国によるスタイルもあります)。パートナー企業が、出展企業様の求めているものと、完全に同じの化粧板を持っているとは限りませんが、希望するモノに近しいものを提案できるほどの知見を持っていることは必須条件です。
6:最後に、パートナー企業の情報開示性、企業的な透明性の高さです。現地の協力会社、パートナー企業はオープンであり、展示会・見本市出展において、将来生じ得るであろうリスクを減らすために尽力すべきであり、何も隠さず、正直ではなければなりません。個人的な経験談として、サプライヤーから、どんなことに対しても「すべては大丈夫、問題ない」と言われた後、最終的に大きなトラブルが発生し、緊迫な判断が求められた時が沢山ありました。「面目を保つ」というのはアジアでは不可欠で一般的な反応であり、「NO」と答えるのは「恥」であると考える人が多いです。余念なく質問をし続け、様々な事態を想定したソリューション・解決方法を聞きましょう。アジアの人々は、権威における独自の考え方があり、この通念はビジネスにおいて重要な役割を果たします。問題事項に関するアプローチ・及び解決方法は、各国や地域性の文化を反映し、様々です。しかし、パートナー企業は各国の文化や社会、規制事項などのギャップを埋め、架け橋となれる能力が備わっていないといけません。
15年が経ち、私はやっとこの日本のやり方・人々の接し方などを学び、尊重できるようになりました。ここ日本はアイオワ州とは異なりますが、人々は魅力的であり、礼儀正しく、フレンドリーです。またビジネスを展開するためにも非常に良い地域だと強く言えます。
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